江戸時代の男性用塗布薬
持続力延長させる「長命丸」
もともとは気付けの薬として使用された「長命丸」は長生きをするための薬のような名称ですが、ペニスに塗ると、精力絶倫になる塗り薬でした。 その使い方としては、セックスの半時間前にペニスに塗布し、洗い落としてから行うとよいとされていたようです。
また、江戸随一のアダルトショップといえば、屋号が四つ目屋長兵衛という秘具秘薬を専門に販売していた店がありました。
「長命丸」は、江戸の秘薬を代表する大傑作で、四つ目屋と言えば「長命丸」、「長命丸」と言えば四つ目屋と連想されるほど、江戸中期以降、大ヒットした男性用の塗布薬です。
文献を見ると、室町時代にも「長命丸」という薬が存在し、これは主に疲労回復の薬で、荒木田守武の『俳諧之連歌・飛梅干句』(天文九-1540年)に、はらのいたきも安きはたもの
きりはたり長命丸やあはすらん
と詠まれています。
また、江戸初期の松永貞徳が判をした句を網羅した『俳諧鷹筑波』(寛永十九-1642年刊)にも、
賀茂の川原で気をぞうしなふ
水をもて長命丸やのますらん
という連歌が記載されている。 これらはいずれも上方の文献であり、当時は精力剤の類ではなく、健康食品のような扱いであったと推定されます。
『慶長見聞集』(慶長十九-1614年成稿)の巻之四の「萬病圓ふりうりの事」に、当時の夏の比、何とやらん例ならず、こころぼうぜんとありければ、往来の人を見て気もはるるやとおもひ、海道を詠め居しに、ふりうりとて萬の物を売らんとよばる。ここにくすしひとり、西大寺長命丸有。 萬病圓うらんとよばるる
とあり、「長命丸」は様々な病気に対して効果をあったようです。
南都の真言律寺の西大寺では、豊心丹という著名な保健薬を売り出したことが知られており、この記述ではこの豊心丹の代名詞として長命丸と呼称したとも考えられます。